た。
何の用事だろう。
とるものもとりあえずでかけてゆくと、
「初席《はつせき》からお前、俺の真打席《しばや》の中入り前を勤めてくんねえ、頼んだぜ」
初席とは元日からの新春《はる》の寄席。相変らずの侠気な革羽織を着てどこかへでかけようとしていた文楽師匠は、めっきり大人びてきた圓朝の細おもての顔を見てニッコリいった。
「…………」
あまりに思いがけないことで、圓朝は口が利けなかった。しばらく目の前の色白の顔をポカンと見ていた。だんだんはち切れるような嬉しさが、あとからあとから擽《くすぐ》ったく身体全体を揺ってきた。
「ア、ありがとうございます」
思わず長い長いお辞儀をしてしまった。
そうして、あら玉の春。
真を打つことは失敗に終ったが、思いがけないこんな福音が転がり込んできたありがたさ。
狐のなく声の聞こえる場末の寄席の真打とは比べものにならないほど反響のあるギッチリ詰まっているお客の前で、思うまんまに腕の振える幸福さ。あかあかと自分の顔を照らす八間《はちけん》の灯《あかり》のいろさえ、一段と花やかなもののあるよう感じられた。
ここぞと腕によりかけて圓朝は喋った。
そ
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