一年毎月いっぺんずつ繰り返している言葉ながらまたしてもここまで独り話してくるとき、きまって合掌しているしなやかな細い双の掌へ、はらはら涙がふりかかってくるのだった。
 みだれた声は、さらにつづいた。
「戻したいのでございます。返したいのでございます、お願いです。お師匠さまどうか……どうか私の技芸上達いたしますよう。三遊派のため、立派な真打になれますよう……」
 組み合わせている手と手を、いよいよキューッと固く合わせて、
「お導きなすって下さいまし」
 深く深く、額がお線香とすれすれ[#「すれすれ」に傍点]になりそうなところまで頭を下げた。そうして、いつ迄も上げなかった。
 ややしばらくして、はじめて顔を上げ、ホッとしたように辺りを見回したとき、ハッキリした目鼻立ちの顔中が、しとどの涙でかがやいていた。
 急いで手拭を懐中から、涙を拭いた。
 立ち上がってもういっぺん、世にも丁寧にお辞儀をして、それから圓朝はもときた道のほうへと歩きだした。
 ともすれば滑りそうになる小さな石段を下り、古井戸の脇のところへ最前の手桶を戻すと圓朝は、
「お世話さまでした」
 と遠慮深げにまだ地震のあとそのま
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