孝行にゃ負けたよ、圓生さんはとんだいい弟子を持ちなすって幸だ」
 とうとう馬道をしてあやまらせてしまったくらいだった、そのくせ事実は馬道のいう通りの性格のところも、多分に圓生にはあったのだけれど。でも、そんなこと、師匠おもいでひとすじの小圓太には決して分ろうわけもなかった。
「ああありがたい、師匠は」
 こうおもうにつけ小圓太はいっそう一生懸命になって師匠の噺を聴きはじめた。聴くばかりじゃないあらゆる呼吸をば探りいれだした、片言隻句、咳ひとつでもそっくりそのまま採りいれてつかってしまうことにやぶさかでなかった。何から何まで圓生生写しの建築が、やがて小圓太というプンと木の香の新しい材木で仕上げられた。
「いままでにお前ほどよく私の噺を聴き込んだものはない、またお前ほど私の噺の呼吸をよく取ってしまった弟子もいないよ、ありがたいとおもうね私は」
 滅多にこんなこといったこともない師匠が、ある晩、しみじみこういって自分の猪口を小圓太へ差してくれた。寄席のお休みの晦日の晩で、真っ暗な庭のところどころには白藤の花が夜目にも微かに揺れていた。
「ト、とんでもない。もったいないお言葉でございます」
 
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