ありがたくそのお酒をいただきながら小圓太は、あわてて手を振った。
「いや、ほんとほんとうだよ。そのうち、お前を真打にしよう。じつはもう二、三軒、さる席へ口をかけているんだ」
 いかにも可愛いもののようにジーッと悧巧そうな小圓太の顔をみつめて、
「二つ返事で席亭も承知をするにちがいないよ、お前の腕なら」
「…………」
 真打に、いよいよこの私が真打に。嬉しさに小圓太は口も利けなかった。
 思わず師匠へ返す盃がガタガタ慄えた。

 が、十五日、ひと月と経って、小圓太真打昇進の話は一向に進んでこなかった。
 圓生はひとりヤキモキした。
 あんなに巧くなっているものを。
 自らほうぼうの席亭へ出向いていって、菓子折など差し出し、懇々と頼んだが、
「ハイハイ分りました、恐れ入ります」
 とか、
「ハイハイいずれそのうち時期を見まして」
 とか、みんながみんな判で押したように煮え切らない返事をするばかりだった。そうしてどこの寄席でもとりあえず菓子折の礼には翌月小圓太を二つ目として宵の浅いところへ、また師匠の圓生には中入りを、せいぜいこれだけの返礼しか報いられなかった。
「バ、馬鹿にしてやがる」
 
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