、夢中で歩いていた、歩きつづけていた。
 これが修業というものか。
 ほんとうの修業というものなのかこれが。
 噺はただ単に喋れるばかりでいいというのじゃない、こうしたいろいろさまざまの困難に耐えてゆく、そしてそれをいちいち噺の中の人物の了見方の上へと移し替えていく。
 それが――それがほんとの修業というものではあったのか。
 とすると、ああ俺何てこッたろう。あの時分あんなに怨んじゃいけなかったんだうちの師匠を。ホレあの入門以来、ろくすっぽ[#「ろくすっぽ」に傍点]稽古もして下さらなければ、前座にすら使っておくんなさらなかったといってさんざ腹を立てたり嘆いたりしたけれど、いってみればあれも、圓太郎の忰でございと永年楽屋勤めをしてきたこの俺を、いろはのいの字から叩き直してやろうてえ思し召しだったのか。そういえばそば[#「そば」に傍点]やおでんを見せ付けては食べさしておくんなさらなかったということも……。
 今更、師匠の底知れぬ心づくしのほどがあとからあとからあぶりだし玩具にあらわるる絵のごとくマザマザと眼先に描かれてきた。何ともいえず恥しかった。
 知らねえで、つゆ[#「つゆ」に傍点]い
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