はらわれていったか、筒いっぱいにこう怒鳴った。
 腰の提灯取り出して灯を点けようともせず、そのまんま後をも見ずに駈けだした。


     六

 一心不乱に勉強しだした、小圓太は。
 ぽつぽつ師匠も噺を教えてくれはじめ、日一日とすじみちはあいてゆく塩梅だったが、なかなかいまはそんなことでは満足してはいられなくなっていた。
 なるんだ、偉くなるんだ。
 一日も早く偉くならなければ、俺は。
 毎晩々々楽屋へいっては前座として働くだけ働き抜いたあと、少しでも間があるとシッカリ楽屋格子へつかまっては、どんな人の噺でも咳ひとつ聴き落とすまいと心がけた。
 その時分、師匠の真打席《とりせき》と文楽師匠の真打席とてれこ[#「てれこ」に傍点]につかって貰うようになっていたのだったが、どこの寄席でも十五日間小圓太のかよってくるところの楽屋格子は必ず手垢でベットリ薄黒く汚れてしまっていた。
 その上、昼間、少しでも暇がみつかると小圓太は、プイと師匠の家を飛び出し、近くのおし原亭あたり、昼席へいった。
 楽屋から客席へとおしてもらい、先輩たちの噺を真正面から取っ組んでは勉強した。これは仲々の薬になった。

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