昇進してしまいました。これがますます、私のためにはいけないいけないことだったんです。
そのうえ、さらにいけないことには燕花となってすぐ阿部川町《あべかわちょう》の寄席と吉原の中鈴木《なかすずき》という寄席と二軒掛け持ちがついたのですが、この阿部川の楽屋には燕作という前座がいてお客さまのお集まりの前に一番太鼓を入れる。この打ち方がてんで[#「てんで」に傍点]なっていないし、第一、間がちがっているので気になってなってならないでいるうち、二番太鼓の大太鼓《おおど》のほうを二つ目の私が打つことになったのですが、このときに私の打った大太鼓がたいそう本筋だと席亭からほめられて、そのために今度は二つ目でなく、なんと三つ目へ上げてもらえるようなことになってしまいました。これも最前の田舎まわりの話同様、馬鹿でもチョンでも私は永年緞帳芝居へ入っていたから太鼓の打ち方も心得ていたのが当たり前なのですと話してしまったら席亭さんも買いかぶりはしなかったでしょうが、こんな具合で不思議にトントン拍子に運のいいことにばかりなってしまったから、結局はますますいけないのです。
もうひとつ、おまけにいけないことには、あ
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