初看板
正岡容

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)平常《ふだん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一席|演《や》った

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#歌記号、1−3−28]
−−

  上

 ……つらつら考えてみると、こんな商売のくせに私はムッツリしてていったい、平常《ふだん》はあなたもご存じの通りに口が重たいほうなのに、しかもいたってそそっかしい。これはまあどういう生まれつきなんだろうと、ときどき情なくなることがありますが、ほんとにムッツリとそそっかしいんです。いつかも銭湯で帽子《シャッポ》をかぶり、股引をはいたまま、あわや湯槽《ゆぶね》へ入ろうとして評判になったし、裸で涼んでいてフイと用事を思い出し、その上へ羽織を引っかけてすまして電車へ乗って笑われたなんてこともありましたっけ。葉書を出しに行く途《みち》で鮭《さけ》の切身をひと切れ買って、まちがえてその鮭のほうを郵便函へほうり込んでしまったこともありました。こいつはあ
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