よくいうあれ[#「あれ」に傍点]と同じでしょう。同時にこのまず自分の「芸」ができてから、ひとりでに人気が出てくるというやつは、これも戦争で申そうなら、私どもにはよくはわかりませんが、いくらいい大砲や鉄砲や軍艦があってもまずそれをつかうお方の心持ちが、ほんとのお侍らしい侍でなけりゃ、しょせんは勝たない、ちょうどそれと同じ理合でしょう。今度の戦争にしたってそうです。国の小さいこの日本がこんなに勝ってこんなに人気の出たというのも、それそこが日本にはまずいい魂をお持ちの軍人さんが先へすっかり揃ってでき上がってしまっていたからですよ。だから大国を相手にしていい軍艦や大砲を向こうにまわしても、こんなめざましい勝負ができたというわけなんですよ。ねえ、あなた、それにちがいないじゃござんせんか。
またちょいとお話が余談にわたりましたね。
ちょうど私がそのようにそろそろお客さまによろこばれだしたら、とたんに禽語楼小さん師匠からうちの師匠へお話があって、あんな歌太郎なんてつまらない名前をいつまでもつけておいちゃかわいそうだからなんでも俺の弟子にくれ、そうして小三治《こさんじ》を襲《つ》がせたいからとここ
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