の大きなやつでキューッと景気をつけていきゃ、風ぐらいへいちゃらですよ。お互いに日本人だ。せめてこっちも高いところから万歳万歳ってやつを、景気よくやってやろうじゃありませんか。


  下

 さすがにずいぶん、こたえますね。ウルッ、ひでえ寒さだ。でもああやって行列している連中はみんな人いきれでホクホクしてるにちがいありませんね。おかげでこっちはちっとばかりのお酒が醒めてしまった。ハッハッハ。
 この醒めたところで引き続き、もうちょっとばかり残っている身の上話のほうを申し上げてしまいましょう。
 さんざ世のなかを怨んで怨んで怨みぬいたあと、じゃなんだっていったい、私はこう売れないんだろう。そこンところを、よくよウく、胸へ手をあてて考えてみました。
 そうしたらこの理屈はすぐにわかってきた。つまりそのいくら仲間にほめられても、とどのつまりはお客さまがよろこんでくださらないからだ。そもそも席亭というものはお客さま次第、お客さまさえよろこんでくだされば南瓜《かぼちゃ》が唐茄子《とうなす》が南京だろうとすぐにオイソレと門を開いて入れてくれるものだ。こう答案がでてきたのです。では、いったいどうした
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