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※[#歌記号、1−3−28]韓信が股をくぐった末見やしゃんせ
踏まれた草にも花が咲く
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って、まったく、あれ、あれですねえ。
さてこの私という馬鹿野郎は申し上げたような仕儀で、あまり初手からいい目が出すぎてしまったもんだから、勝って兜の緒をしめなかった。いいえ、自分じゃすぐにも大看板《おおかんばん》になれる気で勉強をしていたんですが、この頃になって静かに振り返ってみると、やっぱりあの頃の私の勉強てのはてんで独りよがりで、なっちゃなかったんです。どういうふうになっちゃなかったか、それはワザともうしばらく申し上げないでおくとして、なにしろ私は仲間からほめられるほめられる、やたらこたら[#「やたらこたら」に傍点]とほめられるのですが、さてほめられるばかりで一向にパッとしません。お客様にてんで[#「てんで」に傍点]受けず、その結果がどこの席亭でもちっともつかっちゃくれないという始末なんです。
二年、三年、四年、五年――もう五年の月日がそこに経ちましたが、まったくの居据《いずわ》りでどうにもこうにもしようがないんです。こうなるとはじめの一
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