に連れられてお国と相見る。愕いたお国は志丈に旧悪を喋られてしまってはとあることないこと伴蔵に讒訴《ざんそ》する。しかし珍しくここでは伴蔵が志丈のいうことのほうを聞いてかえってしまうため、その晩病癒えた源次郎が押取刀《おっとりがたな》で因縁を付けに乗り込んできて後手を食うのはおもしろい。そこで翌日今度は自宅へ押し掛けてくるが、あべこべに飯島殺しの一件を伴蔵に暴かれ、お見それ申しましたとすごすご涙金で引き下がっていく。いよいよおもしろい。ただこのときの伴蔵が傍らの志丈もあとで賞めるよう「悪いという悪い事は二、三の水出し、遣《や》らずの最中《もなか》、野天《のてん》丁半の鼻ッ張り、ヤアの賭場《とば》まで逐ってきたのだ」などという台詞はさすがに垢抜けのしたものであるが少うし悪党振りがよ過ぎはしないかしら。いつの間に彼こんな大悪党になってしまったのだろうと少しく私にはいぶかしまれる。しょせんが幽霊に金をせびったほどの奴だとしてもその幽霊を案内していくときには恐しさに、梯子から落っこちて慄えた伴蔵である。お主《しゅう》の萩原を殺したとはいえ、これはまた半病人の軟弱そのものの代物である。もちろん、そ
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