入れて萩原様にもしものことあると私たち夫婦は食べていかれなくなるからと、幽霊に居直ってどこからどう持ちださせたものやら大枚百両持ってこさせ、ではと先立ってお札貼がしにでかけていったとき圓朝自らおみねをして「大層長かったね[#「長かったね」に傍点]、どうしたえ」と訊ねさせ、また伴蔵をして「覗いてみると、蚊帳が吊ってあって何だか分らないから裏手のほうへ廻るうちに」といわしめている用意に思い当るのである。「大層長かった」間に荒療治はなし遂げられたにちがいない。仕方がないので伴蔵は大風雨の晩、幸手《さって》堤へ呼び出してとうとうおみねをバッサリ殺ってしまう。と初七日の晩から女中へおみねの死霊が憑いて、「伴蔵さん、貝殻骨から乳の下へ掛けてズブズブと突きとおされた時の痛かったこと」などといいだす。困っているとき江戸から滞留の名医ありと聞いて呼び迎えると、いずくんぞしらん山本志丈。志丈だけに名医がとんだ只今のお笑い草である。しかも志丈の登場はいまはAB二つの完全に合流してしまっている、この物語にいよいよ拍車を掛けるのである。志丈は伴蔵の旧悪を知って強請り、某《なにがし》かの金銀を捲き上げたのち、伴蔵
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