う。話はこうだ。あの晩、手負いの平左衛門は孝助を逃がしてやったのち、姦夫姦婦のところへ斬り込んでいった、そして源次郎に手は負わせたものの、トド彼らのため、滅多斬りに斬殺されてしまった。で、有金をさらって逃げた二人は、ひとたびお国の郷里越後へ走ったが実家絶えてなく、拠所《よんどころ》なく栗橋まで引き返してきたとき、飯島に突かれた傷が痛みだし源次郎はドッと寝込んでしまった。ついにその日に困ってお国は茶屋奉公に。かくて伴蔵と結ばれたというわけなのである。でも、結ばれたのは単にお国と伴蔵ばかりでない、十七席を重ねてきたAB二つの因縁因果物語もまたこの二人の結ばれによってはじめて一心同体と結ばれたのである。
その結果、伴蔵の女房おみねは夫の不身持《ふみもち》を怒って、果ては嫉妬半分お前が「萩原様を殺して海音如来のお像を盗み取って、清水の花壇の中へ埋めて置いたじゃないか」と声高に罵るようになる。ここにおいて我々はお像を盗み取ったばかりでなく彼、伴蔵、日頃、厄介になっている新三郎を殺害したことを初めて知って事の意外に驚くのである。同時に今にしてお露お米にお札を貼がしてと頼まれたとき、お前様方を中へ
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