や金子《けんす》まで」などというのであるが、にっこい[#「にっこい」に傍点]とか、ごじいます[#「ごじいます」に傍点]とか、にやす[#「にやす」に傍点]とか、けんす[#「けんす」に傍点]とか、聞くだに鈍な感じが深い。圓朝門下には俊才も少なくなかったが、同時にぽん太とかコマルとかへん朝とか愚かを以て鳴る名物男も存在していた。あるいはこれらの誰かがモデルだったかもしれない。
お国の策動はいよいよ烈しくて今度は自分の屋敷の若党源助をおだてて、孝助を陥《おと》し入れようとする。この源助の性格もまたよく描かれている。なぜならおだてられて源助、いろいろ孝助を打擲するくせに、何もかも承知している平左衛門がワザと後刻孝助を手討にするというと、「孝助お詫びを願え」、また少し経つと「お詫びを願わないか」しきりにこういって孝助をさとしているからである。なんと正直一途の性格であることが、ハッキリと分るだろう。この源助などは今後さして活躍もせず、いわば仕出し同様の存在なのであるが、それにもチャンとこうした性格を与えている。かつての私の話術の師たる、現三遊亭圓馬(三代目)は大師匠の手記を見ると、全く登場しない女
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