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さらにさらに、
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梅若は十六日があはれなり
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よしや涙雨しげくふるとも、大念仏に群衆賑はふ忌日の十五日よりは、ハタと人影絶えつくしたその翌る日の景色こそ、と。思へばこの句意、殊に哀れ。
黙阿弥つくる「隈田川廓白浪」(すみだがはながれのしらなみ)。
「廓」を「ながれ」と訓ませたは、なんとしみじみと懐しき市井の詩人ではあつたことよ。
その芝居で見た桜餅屋の暖簾のいろ。
御飯をたべながらのあの立廻り
さてもさて、吉田の松若
竹屋の渡
だら/\と渡し場へ下りて行くなぞへ[#「なぞへ」に傍点]な阪のとつつき[#「とつつき」に傍点]に、曲つて折れさうに立つてゐた瓦斯燈ひとつ。
流れ灌頂の周りを泳ぐ都鳥
泉鏡花小史「義血侠血」。林伯猿が関東節にいで来る滝の白糸は、このあたり土手下の家で、恋ゆゑ人をころしたか。そのとき山谷堀の方にあたつて大きな火の手があがつてゐたつけ。
浪六の「当世五人男」。
汐入村の名のなつかしさよ。
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「直ぐと中の郷へ曲つて業平橋へ出ると、この辺はもう春と云つ
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