下町歳事記
正岡容

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)撥橋《はねばし》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)南蛮|鴃舌《げきぜつ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「魚+弗」、第3水準1−94−37]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)見る/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 時雨・雪・三味線堀

 亡くなられた泉鏡花先生のお作の中でも、「註文帳」は当然代表作の一つに数へていいものだらう。殊に雪もやひ[#「もやひ」に傍点]の日の鏡研ぎ五助の家のただずまひ[#「ただずまひ」に傍点]、雪明りの夜の吉原の撥橋《はねばし》、おなじ雪の夜更けの紅梅屋敷――情が、姿が、廓の景色が、マザマザ手に取るやうに浮かんで来てたゞたゞ敬服のほかはない。
 が、あの五助の家のくだりであぐねてゐた空から白いものがチラつきだし、軈て「唯一白」の大雪となる。あの大雪の有様を、

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