た。
風立ってきた曇り日の運動場の一角、招待席の天幕の下で私たちはビールを煽り、ウイスキーを呑んで、寒さを忘れつつ喝采を送った。
しかし、百四十人いるというここのダンサーの、競技に参加した人たちは概して不美人が多く、美人ダンサーたちはせいぜい一ゲームくらいつきあうか、終始、見物側へ廻っているものが多かった。
中で、たった一度だけアベック競走へ参加した面長のダンサーが、美しく私の印象に残った。色は白い方ではなかったが、やさしい品のいい夢見るような眸《ひとみ》の色が、渡米した女優の三浦光子を思わせた。
[#ここから2字下げ]
美しさいまだ目にのこる夜長かな
[#ここで字下げ終わり]
会の翌日、私は原さんへこんな彼女をたたえた拙吟を礼状の終わりへ書いて送ったが、いったいどの女なのだか、原氏にも全然見当はつかないらしかった。
……暗い灯の下で和装洋装とりどりに踊っているダンスホールへ、やがて私たちは案内されたが、ここにも「目にのこる」人の姿はなかった。正面一段高い舞台で演奏しているバンドは、運動会に「君が代」を演って私を驚かせた楽団だろう。
場内の壁に何カ所も、
「リズム・チーク
前へ
次へ
全40ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
正岡 容 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング