艶色落語講談鑑賞
正岡容

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)風邪薬《かぜぐすり》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)古川|緑波《ろっぱ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#歌記号、1−3−28]
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   売色ところどころ



    岡場所の歌

 戦火に遭うまで大塚の花街に、私たちはいた。先だって輪禍で死んだ三遊亭歌笑の家のすぐそばにあたろう。
 その頃女房が教えていた新舞踊のお弟子はたいてい若い妓ばかりだったが、その中の一人が一日やってきて、
「先生、キミサリンって踊りを教えてください」
「キミサリン? そんな風邪薬《かぜぐすり》みたいな踊り知らないわねぇ」
 言いつついろいろ考えた末、やっとわかって彼女、思わずふきだした。
 その踊りは、歌謡曲に取材したもので、すなわち、君去りぬ。
 同じ頃、拙作「花の富籤《とみくじ》」を古川|緑波《ろっぱ》君が上演、その前祝いを土地の待合で催したことがあったが、もうそろそろ酒が乏
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