ようか。アプレゲールの花街風俗詩が、手に取るように書けている。
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天井がない待合で二百円
上海のやうな値段で芸者買
どの花街《しま》も哀れやいつ建つ草の波
行く前に三百円は小料理屋
見番の骨ばかり出来あかざ草
下肥の匂ひこれが東京柳橋
おごりなら泊るあしたは外食券
入口は喫茶、小待合は奥
三味線は郊外《こうがい》できくものになり
帰りがコワイと三人で向島
水神は目ざせど電車でさとごころ
米の値《ね》にふれて遊びの枕許
氷屋の配達に似た客二人
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カストリが青大将のような匂いでハバを利かせ(残念ながら私も飲んだが)、停電が続き、は境い期にお米でビクビクしていた昭和二十一、二年の花街があまりにも如実ではないか。
ありがたいかな、これも今は夢。
今住んでいる市川では、土地の芸者衆はお弟子にしていないが、一番の美人はスラリと痩せ型の細おもて、上背のある千代菊の由。浅草から移ってきた某という、薄手細おもての人も婉である。
幇間《たいこもち》では東川喜久八が洗錬されていて、十八番は江戸前の獅子。市川音頭も彼の作詩で例年夏の夜を、江戸川花火、七|
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