り出したのが寿々木米若君で、この時は第一回渡米から帰り立ての青年浪曲師だった。劇場前の宿屋の二階で、初夏の朝、眼を醒ましたら、
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│ 香取幸枝 │
│正岡容さん江 │
│ 春日恵美子│
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ののぼりが、へんぽんと[#「へんぽんと」は底本では「へんぼんと」]薫風にひるがえっていてびっくりした。香取君は、文豪独歩の遺児国木田虎雄君の最初の夫人で、虎ちゃんが戯れに松竹蒲田のエキストラだった時、同僚として知り合って結婚、のちに別れて松竹関西系の舞台女優としてたまたま来名、一座の春日恵美子とで私にのぼりを祝ってくれたのだった。香取君は薄手細おもての美人で春日君は子供子供した愛嬌のある少女。ともに、のち松竹家庭劇へ参加し、事変の頃は香取君は松竹の社員と江州彦根で結婚生活に入ったと聞いたが、その後の消息をようとして知らない。「鮒鮓《ふなずし》や彦根の城に雲かかる」という私の好きな蕪村の句を誦《よ》むたび、彼女の美しい細おもてを、上海引き揚げ後これも行方のわから
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