若喜家、高徳家、辰桜家、蔦家、浜の家、杉和泉、徳の家、杉日の家、初の家、花本、吉村家、小若松、千代伊セ家、分伊セ家、竹二国家、山桜家、松新丁字、松恵比寿、増田、福の家、喜久家、秀栄家、梅福の家。
 ――これが町内の軒別で、この一番初めの二番地の浪花家といふのが、一番地の角のいろはから裏手へ五軒目の、いろはの次がしもた家の小森、次が加藤、それから桶家、次は豆腐屋であつて、この隣りに始まり、それからはずらりと吉川町を出外れの車宿秋初へ行くまでの、大体御神燈の順序となる。(この社会には家号や代替りは相当頻繁であるから、既に大正二年と十四年では同一ではない。たゞかういふ感じといふだけは、これはその前の明治年間からも変らない意味合ひで上げたものである。)町内で女が男よりも多いのはこれでたちまち判然とする。東陽堂の「新撰東京名所図会」第二十七編、日本橋の三には(明治三十三年十二月発行)、吉川町の「概況」として、かうある、
「裏通りは元柳町に接するを以て、芸妓屋軒を列ねたり、表通りは両国広小路にて商家殷賑を極む。いろは第八支店、一番地(牛肉豚肉販売店)。大黒屋、二番地(美術錦絵画譜画帳出版業)。金花
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