両国界隈
木村荘八

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)溝板《どぶいた》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)理髪店|勇床《いさみどこ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「I」に似た記号、111−10]
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 永井さん(荷風子)が「日和下駄」の中の一節に路地について記された件りがある。
「……両国の広小路に沿うて石を敷いた小路には小間物屋、袋物屋、煎餅屋など種々なる小売店の賑はふ有様、正しく屋根のない勧工場の廊下と見られる。横山町辺のとある路地の中には矢張り立派に石を敷詰めた両側ともに長門筒袋物また筆なぞ製してゐる問屋ばかりが続いてゐるので、路地一帯が倉庫のやうに思はれる処があつた。」
「……路地はいかに精密なる東京市の地図にも、決して明らかには描き出されてゐない。どこから這入つて何処へ抜けられるか、あるひは何処へも抜けられず行止りになつてゐるものか否か、それはけだしその路地に住んで始めて判然するので、一度や二度通り抜けた位で
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