ゝんで居られることだらう。
私事に渉るかも知れないけれども実はぼくは最近――ぼくの主観に関する限り――鏑木さんに入門してゐるのである。しかしお忙しいところを妨げてはいけないのでさうさうは伺はないけれど、――それのみならず、先生に教はつたところを先づ一課目にしてもぼくがその後モノにするのに、却々の修練なり時間がかゝつて、さう子供のやうにはあとからあとからと新課目を御教へ願ふ気易さに行くわけがないから、実はぼくは時々申出でて、女の髪の毛の生えぎはについて(それも特に余人ならぬ鏑木さんのかゝれる女人の)御教示を乞ひ、それを一課目先づ御教へ受けたのであつた。その後愚品ながらぼくのかくこと有るべき女人の日本画ものゝひたひつき、襟足などに、芸が無いとすれば、ぼくは先生に対して申訳ないことゝならうのみ。先生は特に長時間ぼくを画室に参入許して、剰さへ自ら筆を執つて、ぼくの乞ふところを絹の上にかいて見せて下さつた。
その御教示を願ふ前に、ぼくが一応手紙で、ぶしつけな御願ひを先生に申し入れるといふと、快く承知して下さつた御返事の文中に――自分はさしゑの出で、別段鬼一法眼に六韜三略をさづかつたといふ訳の
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