igh collar の訛りであることはいうまでもなく、発音が「ハイカラ」とつまって、日本語になった。元は「ハイ・カラー」と原語なみにカラーを引張って云ったものである。
ハイカラにかぎらず、これは何によらず外来語が「日本語」に生れ代る[#「生れ代る」に傍点]場合には、発音のつまる[#「つまる」に傍点]ことは言葉の経験するところで、modern にしても、モダーンと引張るうちはまだ半洋半和である。「モダン」とつまるに及んで、日本語となり、同時にその世相風俗も日本の板につく。ticket という言葉などこれが「ティッケット」と、よく云われるように舌を噛みそう[#「舌を噛みそう」に傍点]な発音で云われる間は、まだまだ日本のものではない。これが日本語となり、同時にそれが日本の生活へ融け込もうためには、思い切って「テケツ」にならなければならない。
世相の変遷はこう云った言葉の移り変りをキャッチすることによって、先ず端的にその「急所」を掴まえられるように思うけれども、「ハイカラ」についてこれを調べてみると、東京日日新聞の九千号記念紙に次のような新刊書の広告文が掲載されていて、この日附は「明治三
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