て――言葉としてとうに「死語」の一つである。(その実体も死滅したこと、勿論。)今日ではハイ・ネック high neck というより[#「より」に傍点]伊達な、そして洋語そのものとしても意味の幅の広い通語は、人が(主として若い女性)使っても、ハイカラ、或いはハイ・カラーは、もはや云わない。ただわれわれ年輩の旧人が、シックなハイ・ネックをも「ハイカラ」と呼んで、笑われることがあるだけである。
 われわれ年輩の旧人は、少年の頃に、
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※[#歌記号、1−3−28]いやだいやだよ、
 ハイカラさんはいやだ、
 頭の真中にさざえの壺焼
 なんてマがいんでしょ
[#ここで字下げ終わり]
 という歌を、好んでうたった。
「ハイカラ」は欧化風俗のことであるから、この「欧化」という筋骨を度外視しては考えられず、欧化そのものについて考える段になると、こんどは又、たちまち明治世相史の全体がこれへのしかかって来る。その細末の小さなこと、例えば、洋服のカラーは、そもそもはじめには Collar これを「コラル」と発音して、「首巻」或いは「つけえり」と訳された。こういうことも、到底軽視できなけ
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