やいらないわ。どうだつたの今夜は?
弟 十人以上もんだ。お師匠さんが褒めてくれた。
お秋 そりやよかつたねえ。
弟 うまくなつたぜ。姉さん、うまくなつたぜ。肩はこつてゐないの? もんでやらうか? え? もんでやらうか?
お秋 いゝよ、私。こつちやゐないから。(涙をふく)
弟 この分でミツシリやつたら、あと、半年もやつたら、試験が受けられるんだとさ。もつとそれには、解剖をやらなきやならないんだと。――しかし俺、解剖だつてもう少しは知つてゐるんだぜ。ね、姉さん(肩を押えて)此処んとこの、この骨は、何と言ふんだか知つてゐるかい? 知らない、知らないだらう? これは肩胛骨つて言ふんだ、それから――
お秋 痛いよ、恵ちやん、そんなに掴むと痛いよ。
弟 あゝ、痛い位だらう。(笑ふ)初めは、こんなに力が入らなかつたんだ。――来年になれば、俺が働くよ。
お秋 さうなれば、姉さん、どんなに嬉しいか知れないよ。
弟 さうなれば――姉さんの事、手の先だつて外の奴に触らせやしないんだ。――今夜はもう店はしまふの?
お秋 あゝ、だから、恵ちやんも早く二階へ行つておやすみ。
弟 だつて、まだ誰かゐるんだらう。お客
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