将 ぢや、戸締りはいつもの様にね。頼んだよ。(奥へ立去る)
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お秋奥へ消える女将を見送り、床の上にベツと唾を吐く。
外への出口へ行き、道を覗き、誰も来ないのを見て、扉一枚だけを残して入口を締る。窓を閉す。
チヨツと立止つてから、売場へ行き、棚から酒瓶とコツプを取つて、注ぎ、飲む。
たもとの中に煙草を捜す。無いので、舌打をして、ストーヴの下の辺を捜して、客の吸差しの煙草を拾ひ火をつけて、ふかす。眠そうな遠い汽笛の音。お秋、椅子に掛け、テーブルに肘を突く。間。外でコトコト音がする。秋の弟が杖を突いて来る。
[#ここで字下げ終わり]
お秋 あゝ、恵ちやん、今夜おそかつたね。
弟 姉さん、此処にゐたのかい、姉さん――(お秋に寄つて肩にさわる)此処にゐたのかい。(安心した様に微笑)
お秋 寒かつただらう?
弟 なあに、寒かあ無いよ。――今夜もまた締出しを食ふかと思つた。
お秋 お前、おなかは? いゝの?
弟 あゝ、空きやしない。お師匠さんとこで、おさつ[#「おさつ」に傍点]をよばれた。うまかつた。姉さんにも持つて来ようかと思つたんだが、そんな事出来ないもんだから。
お秋 私
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