ん、勘定だ。
お秋 はい。ありがたう。(客一の方へ行く)もうお帰り?
客一 又来るよ。今夜はこれからまだ山の手の方に用事があるんだ。
お秋 さう、いゝわね、いゝ人んとこ?
客一 冗談言ふなよ、それどころかい。あばよ。(出て行く)
お秋 左様なら、又どうぞ。(間)
阪井 おい、酒をくれ。
お秋 酒? あんた、酒を飲むの? 飲んでもいゝの? (左肩を押て)こゝ痛みやしないの?
阪井 大丈夫だよ。なあに。
お秋 さうー(酒を棚から下ろし、注ぐ)
客二 お秋ちやん、もう何時だい?(言ひながら阪井の方を覗《うかゞ》ふ様に注意してゐる)
お秋 さうね、(奥へ向いて)おかみさん、今何時です、おかみさん(返事無し)おや、居ないのかしら、――(奥へ入る)
客二 (阪井に)阪井さんと言ふんでしたね。
阪井 ……(相手を見てゐる)
客二 どんな風なんです浜の方は。
阪井 ……(黙つて酒を飲む)
客二 あんた、朝鮮へ行くと言ふのは本当ですかね? いつ行くんですか?
阪井 (相手を見て苦笑をする)
お秋 (出て来ながら)お湯かな、お湯へ行つたんだわ。あの今九時少し廻つたばかり。
客二 九時過ぎだつて? そいつあ
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