船しちまつたらう。あれさ。
客一 だつてお前、そりや船の連中だらう。今のは仲仕組合のもんだぜ。どうしたんだね。話がわからねえぢやないか。
客三 それはね、船が動かなくなりや仲仕の仕事が無くなる、船でストライキなんかやつて貰つちや五百人からの仲仕は飯の食ひ上げだつてんでね、切りくづしで夢中になつてゐるんですよ。それが嵩じて仲仕が海員協会へなぐり込みをやつたんだ。
お秋 けが人が随分出たつてねえ。
客三 さうだよ、協会にゐる山海丸《さんかいまる》に乗つてゐる男を私は一人知つてゐるがね、そいつも側杖を食つて(頭の横を押へて)こゝんとこをやられてね。なにしろ表から見たが、玄関のとこのはめ板が真赤になつてゐらあ。
客二 そいつあしかし解らねえ話ぢやないか、仲仕だつて労働者ぢや無いか。船の連中がせつかくこゝまでこぎつけたものを、なにも。
客一 それよ、――だけど一番大事なのは誰にしても自分の鼻の下だからな、無理も無えて。
客三 いや、そりや組合の中にだつて、ちつたあ骨の固い者はゐますよ。現に、仲仕の方もストライキに入つて一所にやらなきやいかんと言ひ張つた連中もゐたさうですよ。片腕の、それ、何と言つ
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