てゐるんだらう。阪井が止せと言つても聞かないで、船の連中と喧嘩をしちまつたんだ。そのほかにも阪井の言ふ事に耳をくれなかつたものだから、阪井が合宿を出て行つちまつたんだ。なんでも朝鮮の方へ行くんだとか言つたさうだけど。
お秋 え、朝鮮へ!
仲仕一 しかし、船はみんな動かねえんだし、まだ立つちまう訳は無えんだけれど――とにかくこいつあ困つたなあ。
仲仕二 困つたつてお前、彼奴が居なけりや、おさまりが附かねえんだ。ほかを捜さうぢや無えか。早くしねえと大変なことになつちまわあ。
仲仕一 さうだ。ぢや行くか。――でねお秋さん、後でもし阪井が此処へやつて来たら、さう言つてくんねえか。俺達が捜してゐたつてね。組合の方へ直ぐ来てくれつて、山《やま》三の親父も待つてゐるつてね。さう言つてくれ、頼むぜ。
お秋 えゝ、言つとくわ。言つとくにや言つとくけど、まあ一杯休んで行つたら。
仲仕一 さうしちや居られないんだ。ぢや頼んだよ。
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仲仕達立去る。
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客一 どうしたんだい。一体?
客二 なあに、浜の方の騒ぎさ、それ、方々の船の連中が、いよいよストライキであらかた下
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