はいんなさいよ。どうしたんですよ。
仲仕二 出せよ。おいお秋、出せよ、そんな白ばくれなくたつて!
仲仕四 早く出せよ、出して呉れよ。
仲仕五 電報だ。電報が来たんだ。本部から来たんだ。早く出してくれ。阪井さんが居なきや、どうにもならないんだ。
仲仕六 秋べえ、早く呼んで来てくれ。
お秋 どうしたのさ? 何を出すの?
仲仕一 阪井だよ。阪井を出してくれ。
お秋 阪井さん? 阪井さんがどうかしたの?
仲仕二 今、阪井がゐなければ、どうにも無らないんだ。あの男でなければ誰にもどうにも出来ない事が起きたんだ。
お秋 阪井さんは合宿の方にゐるんぢや無いの?
仲仕一 ぢや此処には来てゐないのかい?
お秋 来てゐないのかつて、阪井さんは一昨日《おととい》来たつきり此処へは来やしないのよ。あんた達にわからないものが、私にわかる筈は無いぢやないの。
仲仕五六 うそつけえ! 色女!
お秋 ま、何を言つてゐるのよ、本当よ。阪井さんは此処にや来てはゐないわ。うそだと思つたら二階に行つて捜したつていゝわ。
仲仕一 さうか、そいつは困つたなあ。何処に行つちまつたんだらう。なあにね、今朝だ、みんな浜のあれで気が立つ
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