ゝ――。
杉山 お客は取らずか?
沢子 えゝ――。
[#ここから2字下げ]
間。
[#ここで字下げ終わり]
杉山 綺麗だなあ、お前は。
沢子 ――そつちに居て下さい。
杉山 寂しいだらう?
沢子 ――何をするの? 何をするの?
杉山 ま、さう言ふなよ。何も別に、おめえ――。いゝぢやないか。――さう言ふなよ。
沢子 何をするの? 私、おかみさんを呼んでよ。秋ちやんを呼んでよ。秋ちやん――。
杉山 さう言ふなよ。俺、何もしやあしないぢや無いか別に何も――。(煙草を出して火をつける)
[#ここから2字下げ]
階下の騒ぎ。
[#ここで字下げ終わり]
[#地から1字上げ]――幕――


(二)[#「(二)」は縦中横] 階下の酒場


[#ここから2字下げ]
少し淋しい位に広い。所々に置いてある安物の椅子テーブル。右奥に階段の昇り口。四五人のお客とお秋――今迄食ひ酔つてワイワイ騒いでゐたのがヒヨイと静かになつた所。正面の入口の所の外―舞台奥―からヒシヒシと詰めかけて入らうとする十人ばかりの仲仕達。
[#ここで字下げ終わり]

客一 何だ、何だ?
客二 どうしたつてんだい?
お秋 どうしたの、まあお
前へ 次へ
全81ページ中27ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング