して又?
杉山 わかつてゐるぢや無いか。
お秋 しかし、沢ちやんは駄目だし、私だけよ。こんなお婆さん。
杉山 そんな事ぢや無えさ。
お秋 だつてお前さん――。
杉山 何を言つてやがるんだ。――白つばくれるのもいゝ加減にしなよ。
お秋 おやおや、何の事なの一体?
杉山 その手を食ふか! 初子を出しなよ。初子を返してくれ。(ドツカリ坐る)返してくれるまで俺は此処で待つてゐるよ。
お秋 え、初ちやん? 変だねえ。初ちやんはあの時、チヤンとあんな話になつて町田さんとこに居るんぢや無いの? お前さんだつて今更――。
杉山 へ、何を言つてやがるんだ。――初子は町田さんとこにや昨日から居ないんだ。此処にゐるんだ。此処に来てゐるんだ。それを知らねえと思つてゐるのか。
お秋 へえ? どうしてまた、そんな?
杉山 どうしてもかうしても無いよ。文句を言はずに出してくれよ。
お秋 町田さんと喧嘩でもしたの?
杉山 そんな事、俺は知らんよ。
お秋 だつて、変ぢやないか。
杉山 変でも、何でも、彼奴、昨日町田んとこを飛出したなあ本当なんだ。
お秋 しかし初ちやんは此の家にや来てゐないわよ。私達、そんな話も聞かない
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