。何かを捜す様に室の中をヂロヂロ見廻した後、引込む。
階下の騒ぎ。
汽笛の音。
再び奥から覗く杉山の顔。ズツと室へ入つて来る。
[#ここで字下げ終わり]
杉山 おい。
沢子 え? あ、杉山さん。
杉山 沢ちやんだつたか。――おい、何処にゐるんだい。なには?
沢子 何が?
杉山 早く言つてくれよ。知らない振りをしたつて駄目だぜ、何処に隠してあるんだい。
沢子 何を言つてゐるんだか、私にや解らないわ。
杉山 白つばくれるなよ。俺は知つてゐるんだぜ、何もかも。
沢子 だつて、あんた、何の事だか――。
杉山 まだそんな事を言ふのか、俺は――。
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足音がして、少し乱れた着物をして、手に何か持ちながら、お秋が入つて来る。
[#ここで字下げ終わり]
お秋 あゝあ、やつと寝ちまやがつた。――沢ちやん、あんた、これ食べない(手に持つたものを置かうとして、杉山を見る)おや!
杉山 お秋さん、久し振りだなあ。相変らず全盛だね。
お秋 ま、杉山さん。(間)ほんとに久し振りねえ。どうしたの? あれ以来、スツカリお見限りね。現金なもんだわ。
杉山 さうでも無いさ。
お秋 そして今夜は? どう
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