んだもの、ねえ沢ちやん。
杉山 (信じない)何を言つてやがるんだ。
お秋 しかし、ねえ杉山さん。よしんば、初ちやんが此処に来てゐたつて、あんたとはスツパリになつてゐるんだし、何もそんなに言ふ事は無いぢやないの?
杉山 彼奴は俺んとこへ来たがつてゐるんだ。綺麗に出してくれりや、だから、文句は無いんだ。
お秋 そんな無茶を言つたつて、――杉山さん、お前さん、あれからも初ちやんや町田さんとこへチヨイチヨイ行つたんだね?――そして又金でも出さしてゐたんぢや無いの? さうぢや無いの?
杉山 ――そんな事、俺が知るもんかね。
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短い間。
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お秋 ――そんなことだらうと思つてゐたわ。――しかし本当に此処には来てゐないのよ。あれ以来一度だつて来やしないわ。おかみさんに訊ねたつて、コツクさんに聞いたつていゝわよ。
杉山 みんなグルになつてゐやがるんだ。そんな手に乗るかい!
お秋 そんな、人が本当に言ふ事をいつまでも疑《うたぐ》るんだつたら、どうするの?
杉山 どうするつて? さうさ、此処で待つてゐるんだ。一日でも二日でも一ヶ月でも此処に坐つて待つよ。俺は彼奴
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