ならあ。(金テコで火の中から引き出した鉄を金床の上にコツンと置き)ありがてえもんじゃねえかよ!(それを金つちでチン、チンと叩く)ほら、来い!
さぶ だども、無駄な事だと思うがなあ。ヨイショと!(大金つちでドッチンと叩く)
かじや (チンと叩き)あにが無駄だ? そういう量見じゃ(ドッチン)ふつ、さぶなんぞ、いつまで経っても(ドッチン)ロクなかじやにゃなれねえて。(トンカン、トンカン、トンカンと次第に遠ざかり消える)
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鈴の音は続いて行く。
サクサクサクと畑の土を鍬がうなって行く音。
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農夫 (うなって行きながら)そんじゃ、しげ、ソロソロ苗運んで来るべし。
しげ あーい、やれ、どっこいしょ。(と、使っていた鍬をドンとわきに置く)
農夫 南がわの苗木から先に持って来るだぞ。札にノーリンと書いてあるやつだ。
しげ あい。あれま、荒木の婆さま、又行ってら。
農夫 ほう(鍬の手を休めて、見る)なんとまあイソイソして、まるで、へえ、娘っこが祭りにでも行くようなアンベエしきだ。
しげ 左様さ、あの婆さまにしてみりゃ、祭りに行くのと同じかも知れねえさ。なんぼ
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