な所に?
そめ お晩で――
馬方 又、泣いてるだな、こねえな所で――チェッ、しょうのねえ婆さまだのう――だから、朝逢った時、あんだけ俺が言ってやったじゃねえかよ。シベリヤに居る息子は、役場に連れに行ったとて、どうならず? 無駄な事ぁ、はなっから、わかってんじゃねえかよ。それをさ、目え釣り上げて役場さ行っちゃ、日が一日サンザからかわれてよ、ガッカリして戻って来て、ここの橋の所まで来ると泣いてござら。しっかりせんと、今に、お前、川ん中にでもドンブリこいたら、どうしるだあ?
そめ 俺あ、まちがって、いやした。もう、へえ、こんな事しねえから――
馬方 へへ、まあ、そいつがお前の業つうもんずら。くたびれつろ? えらかったら、俺の車さ乗って行くか? なによ、どうせ空車だあ。乗りなよ、さあ――
そめ ありがとうござりやす。
かつ (小走りに近づいて来ながら)ああい、婆さまかよう?
そめ おかつや――
馬方 ああ内の人かよ。てえげえに[#「てえげえに」は底本では「てえけえに」]するがええぞ。こんな年寄りば、一人でおっぱなしてやってよ、たった[#「たった」は底本では「たつた」]今も、此処にぶっ坐って泣い
前へ
次へ
全33ページ中30ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング