に弱り果てた声)お晩でやす。
青年 ……(それを見返り、見返り、歩き出し、癖になっているハモニカが口へ行って、「砂漠」のメロディ。ある所まで吹いてピタリとやめる。あとは、スタスタと地下足袋の足音だけが遠ざかる)
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コトコト、コロコロと歩いて行く下駄と鈴の音。
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男の子 (前出)やいやい、キチゲばば!
そめ ……(チョット立停るが、又、歩き出す)
男の子 とまれ! へえ、じょうぶ待っていたんだぞ、俺あ。(鈴の音がとまる)ホリョ、もどしてくれたかよ? うん?
そめ ……(やっぱり弱々しく、おびえた声)もどしてくれなんだわ。
男の子 なぜ、もどさねえだ?
そめ ズーッと、遠いんですと。
男の子 いくら遠くとも、おめえの息子ずら? そんだら、なぜもどさねえだ?
そめ あい。……
男の子 悪いぞ、そんな奴あ! へえ、俺ぁ、きかんから。
そめ ありがとうさん。……通しておくれんさいな。
男の子 これ、返さあ。
そめ なにな? ああ、昼間あげた十円だな? どうしてな? おっ母あに、しかられたかな?
男の子 しかられやせん。もう要らんけん、返さあ。
そめ
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