村先生のおうちでやるから、あなたも出てくれない? 女子青年会の方からも、新田《しんでん》のお藤さんや米子さんなぞも出るの。
青年 そうでやすか。出たいけんど、なんせ、晩めし食うと、くたびれてんで、じき眠くなっちゃって――
女教師 あらあ、あんたみたいな若い人が、そんな――それにね、光村先生がこないだ東京へ行って来て、農村演劇の話聞いて来たり、本も一杯買って来てござるから、面白い話が出るだろうと思うの。文化会で劇をしようと言ってた、あの話に就いて、よ。
青年 そうでやすか、そいじゃ出席します。
女教師 是非ね、じゃ、後で又。(コトコトと靴の音が去りかける。その音に鈴の音が混って来る)
青年 ああ、鷲山の婆さま、今日も行ったな。
女教師 (横道の離れた所から)え、なあに?
青年 いいえ、なんでもねえです。
女教師 そう? じゃ、バイバイ。(靴音消える)
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鈴の音と下駄の音近づく。
[#ここで字下げ終わり]
青年 お晩でやす、婆さま。――(返事なし)役場の帰りだかい?(返事無し)……くたびれただなあ。もう、よしゃ、いいに。……どうしただよ、婆さま?
そめ (消え入るよう
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