うござります。
農夫 そうだ、こっちに来なせよ。(助けて土間の隅の腰かけにかけさせる。鈴がコロコロ鳴る)
吏四 助役さん、農地委員の方から人が見えておりますが。
助役 おい、行くよ。(パタパタと奥へ去る)
[#ここから3字下げ]
表の押戸がキイキイと開閉して、
[#ここで字下げ終わり]
娘 あのう、戸籍トウホン、お願えしたいのですが?
吏三 トウホンかね? だら、ズーッと奥へ行って、戸籍係があるから、そう言いなさい。
[#ここから4字下げ]
電話のベルがジリジリと鳴る。それにかぶせて大時計がユックリ十一時を打つ。それにかぶせて「はいはい、こちらは駒形村役場ですよ。……はい……はあ……はあはあ」と言う声。それらの音が次第に遠くなり、消える。
[#ここで字下げ終わり]
青年 (歩きながら、ハモニカを吹いて来る。節は又古めかしい「砂漠に日が落ちて」と言うやつ)
女教師 柿沼さん、今、お帰り?
青年 ああ、村山先生、お晩でやす。
女教師 お疲れさま、近頃あなた開墾ですってね? えらいわね、大変でしょ?
青年 いえ、今日は山の畑の方です。
女教師 そう。あの今晩ね、いつか言ってた文化会の相談を光
前へ 次へ
全33ページ中23ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング