こりゃ――
そめ 今日は、ええあんべえでございます。
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ていねいに頭を下げる。
[#ここで字下げ終わり]
吏三 はい。(と、受けて)ええあんべえは、結構だけど、又来やしたかい?
そめ はい、あのう……私は、駒形村、字、鷲山の荒木源次郎の嫁のおかつの伯母で、ズーッと源次郎にかかりうどになっていやす、荒木そめと申します。ちょっくらお願いしたい事がありやして――
吏員 わかった。わかった。わかっていやす。
農夫 はあん、すると、これがシベリヤぼけの婆さまかなし? へえ、話にゃ聞いていたが――
そめ はい。シベリヤから、これが、あの……(と懐中から紙包みを出してガサガサ開く)このハガキがチャンとこうしてシベリヤから参りました。へえ、ごらんなして。チャンと末吉と、荒木末吉と、ここに書いてありやす。無事でチャンと働らいていますから、なんでやす、いろいろ、そちらさまでも御都合がお有りでやしょうけんど、どうぞこの、お願いでやす、早く帰してやってつかあされるように……いえ、ただ身体一つで帰してさえくだされば、それだけで結構でやすから、お願い申します。
吏三 そうら始まった。……婆さ
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