処へ持ち込んで来られてもどうにも処置無えだから、その、あんたとこの実行組合にでも行ってだなあ――
農夫 行きやしたよ、サンザ、いくら行っても、受取る時に一々カンカンにかけて受取るわけじゃねえからつうので、へえ、スのコンニャクのと云うばかりでさ――
吏三 スのコンニャクか。弱ったなあ。(ガシガシと頭を掻く)
農夫 弱ったちったって、あんた方あ、頭あ掻いてりゃ済むが、わしら百姓に肥料が足りねえと、これ、命取りだからね。さればと云って、これ、どこへ訴えりゃええか、わからねえですからよ。
吏三 そいでも、川本さんよ、此処は村役場の世話係だかんねえ。カリンサンの事を訴えるちったってお前、……弱ったなあ。(コトコトと足音)ああ久我君、どこへ行くの?
吏二 学校。教科書が来たんですって。……(カタカタと歩いて、入口の押戸をギイと開ける。同時にコロコロと鈴の音)あら、又来た婆さま。そんな所に立ってねえで、おはいんなさい、さあ、よ。(相手を内に入れ、自分は出て行く。押戸がギイギイとゆれてしまる)
そめ はい、はい。(おじぎをしながら、受付台の方へ)
吏三 やあ、そうだっけ、今日は二十六日だった。どうも、
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