こちらは駒形村役場。はあ、ああ県庁の学務課で――……はい……はあ……はあ、はあ……そうでやすか……はあ……まだ配給になってないぶんの教科書……全部、ついたんですね? そりゃ、どうもお手数で。学校でも喜こぶでしょう。……はあ……直ぐ伝えときます。じかに、じゃ、その大坪書店の方へ伝票持って行けば、わかりますね?……はい……はい……どうもそりゃ、ありがとうがした。じゃ……(ガチャリと受話器をかけて)助役さん、足りなかった教科書が全部着いたそうです。
助役 そうか、そりゃよかった。こないだっから、校長さんにコボされて弱っていた。
吏一 久我さん――
吏二 (若い女)はい。
吏一 あんた、御苦労だが、ひとっ走り学校さ行って、そう云って来てくれないか。
助役 電話かけりゃ、よかろう。
吏二 学校の電話、故障で通じないんです、直ぐ私、行って参ります。(ゴトリと立ってパタパタ歩き、靴を突っかけて、土間をコトコト)
農夫 (のら声)配給のカリンサンの量目が、あんなに足りねえとあっちゃ、わしら、なんとしても困りやすからねえ、どうすりゃええか――
吏三 (三十位の男)だから、昨日も言ったように、そんな事を此
前へ 次へ
全33ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング