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鈴の音と下駄の音。
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男の子 やいこら、キチゲばば――どけえ行くよ?
そめ わたしは、ちょっくら、あの――
男の子 どけえ行くよ? 云わねば、ここの橋通っちゃならんぞ。
そめ ちょっくら、あの、役場さ――
男の子 役場さ行って、なによしるだ? それ云え。云わねば、通さんぞ。
そめ そんな事云わんと、通しておくれんさい。
男の子 そんじゃ、ゼニよこせ。ゼニよこさねば通さんぞ。
そめ ゼニかな? そんなら……(帯の間からキンチャクを出し、サツを取り出して)はい、これあげやす。
男の子 (受取って)……ふん。
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おそめが急いで去って行く下駄と鈴の音。
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男の子 やい、なによ笑う――
そめ あい、良いお子だなし。(遠ざかる)
男の子 (その後ろ姿に向って)バカア! キチゲエばばあ!
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電話器のベルがジリジリ、ジリジリと鳴り、それから、ゴトンと椅子から立って、床の上をペタペタとスリッパで急いで行く人の足音。ガチャと受話器をはずす。
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吏員一 はいはい……はい、
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