。
美緒 なんの事言つてるのよ?
五郎 う? うん、……あのなあ美緒、今日は赤井達が来るし、利ちやんも来るかも知れんが、喋つちや駄目だよ。いゝな、無言の行だぜ。
美緒 いゝわ、約束してよ。……でも此処でみんなお話してね、私寂しいから。……私、黙つて聞いてゐるだけだから。此処で話してね、……よくつて?
五郎 よしよし。
美緒 あゝ、うれしい! あなたつたら、誰でも直ぐに浜に連れて行つてしまふんですもの。……あすこで一体、どんな良い話をしてゐるの?……妬けてよ、私……。
女の声 (玄関から)こんにちわあ……。
美緒 あゝ、京子さんよ。
五郎 そら、黙つて! (玄関の方へ行く)や、いらつしやい。
京子の声 これから泳ぎに行くんですの。
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言つてゐる間に、京子の兄の比企正文が黙つて微笑しながら病室に入つて来る。つゞいて京子も玄関の間にあがつて、そこに坐る。比企は口数が少いが、しかしいつも平均して機嫌の良い調和の取れた真面目一方の男である。頭の中が常に論理的に整理された人間のみに在る落着きと、同時にそんな人間にのみ特有の、病的でない偏執性を現はしてゐる。開業医らしい所は無
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