此の俺がその不動産を自分の自由にでもするかと思つてゐるんだ。
美緒 ……(おびえて、手を合せんばかりにして)却つていゝぢやないの、こんな事でサツパリと縁が切れてくれゝば、もううるさくなくつて。……怒らないで。……私、こはいわ。
五郎 (それを見て、辛うじて自分を制する)……心配するな、乱暴はしない。……フフ、それでゐて、あの人がお前の病気をしんから心配してゐるのも本当なんだ。母親としての愛情に嘘は無い。だのに、あんな話をヅケヅケと、お前の病気にさはる事も考へてる余裕が無い。たとへ死んでも仕方がないと思つてる。……俺にや、どう言ふんだかサツパリわからないよ。……それが人間か?……さうだな、それが人間かもわからんな……(廊下に立停つて何か考へ込んでゐる)
美緒 (すがり付くやうに)そんな事どうでもいゝから、画を描いてね、此の金で。
五郎 ……(全く別の事を考へてゐる)いや、そんな事どうでもいゝや。……ハツハハハ、アツハハハ(不意に笑ひ出して)よし、それでいゝんだ、人間それでいゝんだよ。なにがなんでも生きりやそれでいゝんだ。生きる事が一切だ。そいつだけがすばらしい事だ。善いも悪いもあるもんか
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