やないか。お母さんからの二十円今月の分はもう貰つてある。
美緒 国の私の不動産を利男に書換へたら、私にも恵子にも三百円づゝ分けて呉れるんですつて。……その一部をあげとくんだつて。
五郎 え! そいぢや――(と急に何かに思ひ当つて椅子から立上る)……そいぢや、なにか、お母さん此の間、書換への事をお前に言つたのか?
美緒 ……(おびえてオロオロしながら)うん。……あん時……あなたが尾崎さんと浜へ出て行つた直ぐ後で……。
五郎 さうか。……そいで、お前、昂奮して、その後、あんな事になつたんだな。さうだな?……変だ変だと思つてゐたんだ。あんな風になる筈の無い症状なのに、どうしたんだらうと、今まで俺あ腑に落ちなかつたんだ。さうか……(今にも爆発しさうに腹が立つて来る。そのまゝでゐると美緒に喰つてかゝりさうな自分を怖れて、プイと廊下に飛び出して)……畜生! (廊下をドシドシ歩きながら)あんなに俺が頼んだのに……。
美緒 ……(小さくなつて、五郎を眼で追つてゐる)
五郎 無智だから無智だからとお前はよく言ふが、単に無智なだけで、こんな、見す見す、実の娘に対して、毒々しい事がやれるもんか。……あれは、
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