く、研究室にこもつてゐる科学者と言つた風だ。これから海に行くつもりか、浴衣姿に皮のバンドをしめ、聴心器だけを懐中にねぢ込んでゐる。
京子は身体の立派な美しい女で、潮風に荒れないやうに乱暴に厚く塗つた白粉の、頤や首の所がまだらになつたのが、変に魅惑的である。此の女にはひどく子供の様に――と言ふよりも白痴の様に無邪気になる時がある。そんな瞬間には、眼がスガメになつてしまつて、彼女自身も自分がいま何処にゐるのかわからなくなりでもするやうだ。これも浴衣姿。ニツコリして美緒に目礼する。美緒も目礼。
二人の来た事を知つて小母さんが、イソイソしながら茶を運んで来る。
[#ここで字下げ終わり]
比企 (美緒に)やあ、今日は、どうです?
美緒 毎日、ホントにすみません。
比企 なに、浜へ行くついでにチヨツト診てあげようと思つて……。(聴心器を出す)久我君、フイブルは?
五郎 (比企と京子の中間、つまり玄関の間と病室の間の敷居の上に坐つて)ありません、昨日の午後から。
比企 一昨日の僕の処方は?
五郎 やつてます。おかげで食慾が少し出た。
比企 ナツハシユヴアイス?
五郎 かなり有ります。
比企 今朝
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