気ばつてゐるでしよ? あなただつて、そのために苦しんでゐるわね。……だのに私がもう生きてゐまいと思へば実に簡単なの。かうして、グツと舌を噛めば、それでおしまひ。とめようと思つてもあなたにもどうする事も出来ない。さうぢやなくつて?
五郎 ……(相手を睨んでゐる)
美緒 ……ねえ。あのね――。
五郎 うん?
美緒 神様は在るの?
五郎 なんだよ? 神様?……(びつくりして相手を見詰めてゐる。美緒の頭の中にどんな思考が往来してゐるかを見透さうとしてゐる。不意にわざとニヤニヤして)ハツハ。お前、病気がつらいんで、神様が欲しくなつたのか? 俺が何と答へればお前の気に入るんだ? 欲しきや、いくらでも作り出したらいゝぢやないか。
美緒 (眼をカツと開いて、五郎の調子に乗つて行かうとしない)うゝん、はぐらかさうとしたつて駄目。……[#「……」は底本では「・…」]私、まじめよ……聞かして。……私、あなたの言ふ通りに信じるから。……[#「……」は底本では「…‥」]だから、あなたもまじめに言つてよ。うゝん証明して貰はなくともいゝの。理窟は要らない。本当の事を一言で言つて! ……神様は在る?
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